子供がいない夫婦にありがちな相続の落とし穴 だから遺言は必要なのです

 

こんにちは、函館の行政書士 小川たけひろです。

「うちには子供がいないから相続で揉めることもないから安心」と話されている方がいらっしゃいますが、これは大きな間違いです。  しかも、このような間違った認識をされている方が少なくありません。

つまり、子供のいないご夫婦で旦那さんが亡くなってしまった場合、相続財産は全財産がすんなり妻に相続されると誤解されているのです。

この誤解は、後々残された妻が相続手続きにおいて、大きな苦労をすることになるかもしれない問題を含んでいます。 子供のいない夫婦で、例えば夫が遺言をせずに亡くなった場合には、相続人は配偶者である妻と夫の父母や祖父母、もしくは、妻と夫の兄弟姉妹が相続人となります。(←ここを誤解されている方が多くいらっしゃいます。)

また、この兄弟姉妹が先に亡くなっている場合にはその子、つまり夫の甥や姪が相続人となります。(これを代襲相続といいます。)

これを2つの相続パターンで考えてみます。

 

1.相続人が妻と夫の父母の場合

この場合には、法定相続分は妻が3分の2、夫の父母が健在である場合には残りの3分の1を2人で分け合うので各6分の1となります。

しかし、実際に遺産分割協議をするとなると、「嫁と姑」との間で話し合いをすることになり、これを負担に思う方もいらっしゃるようです。

父母が健康な方なら、すんなり話し合いができるのでしょうが、片方もしくは双方が認知症になっているような場合には、遺産分割協議を行うにあたり、家庭裁判所で後見開始の審判を受け、成年後見人の選任手続をしなければならいことになります。

後見開始の審判がされるまでおおよそ2か月近くかかり、また審判にあたり、ごく稀にではありますが、鑑定が必要と判断されれば決して安くはない費用も掛かることになり、残された妻の精神的、金銭的負担も大きくなる可能性もあるのです。

2.相続人が妻と夫の兄弟姉妹や兄弟姉妹が先に亡くなっている場合の甥や姪の場合

妻の負担がより大きいのはこのパターンかもしれません。

夫の父母が亡くなってしまい、その後夫の死亡により妻が残され、夫の兄弟姉妹も健在もしくは一部が死亡しているといった場合です。

この場合には、法定相続分は妻が4分の3、夫の兄弟姉妹が健在である場合は4分の1をその人数で分け合うことになります。甥や姪はその分け合った相続分をさらに人数で分け合うことになります。

そして、この場合でも、残された妻は夫の兄弟姉妹全員と遺産分割協議をしなければなりません。ここでも兄弟姉妹と妻との関係に特別問題がなければ良いのですが、そうでない場合は多少なりとも精神的な負担となるかもしれません。

しかもそれだけではなく、夫の兄弟姉妹の人数が多い場合は、その住所を確認して連絡を取り、協議の場まで参集してもらうだけでもかなりの苦労する可能性があります。  そして、夫の兄弟姉妹がすでに亡くなっていてその子(夫の甥姪)が代襲相続人となっている場合には、さらに相続人の人数が増えることになり、より負担も大きくなることもあり得ます。

さらにこれだけではなく、子供のいない夫婦で、自宅や預貯金などの財産が夫名義になっている場合、夫が亡くなると、妻は、夫の兄弟姉妹や甥姪と遺産分割協議なしには、今まで夫と暮らしてきた自宅を自分の名義に変えることができません。

また、夫が死亡した事実が金融機関に伝わると夫名義の預貯金が凍結されます。これを解約して払い戻したり、妻名義に変更したりする場合にも、夫の兄弟姉妹や甥姪に金融機関所定の書類に署名押印をもらう必要があります。 ここで相続人全員の協力を得られなかったり、人数が多かったり、遠方に住んでいる相続人がいる場合などにより、手続きに時間がかかったりすると、残された妻は生活費を下ろすこともままならず、生活を脅かされる危険性もあるのです。

こうした不都合を防ぐためには、夫が妻のために「自分が死んだら、私の全財産を妻に相続させる」という遺言をしておく必要があります。もちろん、妻の方が先に亡くなる可能性もありますので、同様の遺言を妻の方でも用意しておくと良いかもしれません。

そして、遺言が有効であれば、兄弟姉妹には遺留分はありませんので、残された妻は、被相続人の兄弟姉妹や甥姪らと遺産分割協議をすることなく、夫の全ての財産を相続できます。また、自宅の名義変更に際しても、スムーズに手続きをすることができます。 このようなことから、遺言を残しておくことは、残された妻が後々大きな負担を抱えず相続を行えるメリットがあるのです。

”おひとりさま”の自分が死んだら財産はどうなるの?もあわせてお読みください。

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