養育費と時効 支払いが滞ったらどうすればいい?

こんにちは、函館の行政書士 小川たけひろです。

突然ですが、養育費には、時効があります。「そのうち払ってもらえるだろう」と養育費の請求を先延ばしにしていると、いつの間にか時効が来て養育費を払ってもらえなくなるケースもあります。今回は、養育費の時効や、未払いを防ぐための方法についてお話しします。

 

1.養育費は一定期間請求しないと支払ってもらえなくなります

離婚後、子どもを引き取り養育している親は、子どもを養育していない親に対して、子どもを育てていくための費用、つまり養育費を請求することができます。しかし、請求できる権利を持っていても、一定期間請求しなければ、時効で権利が消滅してしまいます。これを「消滅時効」といいます。

令和2年4月1日に改正された民法には、消滅時効期間は、原則として次のどちらか早い方となります。

  • 権利を行使できることを知った時から5年
  • 権利を行使できる時から10年

①と②の違いは「どんな方法で養育費の取り決めをしたか」によります。

夫婦間で話し合って養育費の内容を取り決め、その内容を「離婚協議書」や「公正証書」といった書面に残していた場合、時効は5年になります。また、調停、審判、裁判などの手続きによって養育費が決定された場合には、時効は10年になります。

そして、養育費は毎月払いが基本です。そのため、離婚時に「離婚協議書」や「公正証書」で取り決めた養育費は、月ごとに支払い時期が到来しますので、原則として、各支払い時期から5年が経過すると、毎月順番に時効にかかります。

2.養育費の取り決めをしていない場合、時効はどうなる?

ここまでは養育費の取り決めが行われていた場合の話しですが、離婚時や離婚した後も養育費の取り決めをしていない場合もあります。では、取り決めなかった場合、過去の養育費についてはいつまで請求できるのでしょうか?

残念ながら、養育費は、取り決めをしていないと、過去の分についての請求は認められません。つまり、「請求した月の分」からしか支払ってもらえませんので、養育費の請求は可能な限り早く行うようにしましょう。

3.「時効の中断」で時効の完成を阻止する

では、取り決めをしたのに支払ってもらえず、時効の完成が近づいてきた場合何か手立てはないものでしょうか?未払いの養育費がある場合、「時効の中断」をすれば、時効の完成を止めることができます。

時効の中断とは、一時的な中断という意味ではなく、中断があった時に、時間がリセットされ、そこから新たに5年または10年といった時効の計算が始まるということです。

そして、時効を中断させる方法はいくつかあります。

具体的には、「債務承認」「裁判上の請求」「仮差押、差押え」といった行為があれば、時効が中断します。また、時効の中断は何度でもすることができます。したがって、時効が完成する度に中断を繰り返すとずっと養育費の時効は完成しなくなります。

4.「催告」して時効の完成を遅らせる

しかし、裁判や差し押さえなどの手続きに踏み切るのは時間も労力もかかって大変です。場合によっては何か月もかかる場合もあり、この間に、時効が完成してしまえば、今までかけた時間も労力も水の泡になってしまいます。

そこで、このような場合、一時的に時効の完成を遅らせる方法があります。それが「催告」という方法です。「催告」は相手方に対して、裁判所を使わないで、養育費などを請求する意思表示を行うと、その時点から6か月間時効期間は延長されます。

たとえば、あと一週間で養育費の時効が完成してしまうような場合、裁判を起こすとか、差押えするなどは現実的ではありません。そんなとき、取りあえず、一週間以内に相手に口頭や書面で請求の意思表示をすれば、そこから6が月以内に裁判の提起や債務者の承認などの時効中断の手続が可能になります。

逆にいうと、催告から6か月の間に,裁判の提起や債務者の承認などがされないと催告の効力が失われ、消滅時効が完成してしまいます。

5.「催告」は内容証明郵便で行いましょう

このように、「催告」は消滅時効完成を一時的に回避するために活用されるものです。その後時効を中断しようと裁判を提起した場合、「消滅時効は完成していない」つまり、時効が完成する前に相手方に請求の意思表示が届いているということを証明する必要があります。そのためにも「催告」は,内容証明郵便によって通知すべきです。

6.時効完成後は養育費を請求できないのか?

しかし、消滅時効によって、5年が経過すれば自動的に請求権が消えてしまうわけでありません。相手が、消滅時効を援用(例「時効が完成しているので支払いません」と主張)することで、初めて請求ができなくなります。したがって、相手が消滅時効に気づかず、援用してこなければ、時効は完成しないため、未払いの養育費を請求することができます。

7.養育費の未払いが発生したら

〇離婚協議書で取り決めた場合

日本の夫婦が離婚する場合、90%以上が話し合いにより離婚条件を決め、離婚届を提出するという「協議離婚」です。そして、養育費や慰謝料、財産分与など条件が整ったら離婚協議書を作成する方もいらっしゃいます。

離婚協議書がある場合、その書面に記載された通りの養育費の支払い義務が発生します。したがって、離婚協議書を作成していた場合、養育費の支払いが滞ってしまったら、相手に対して、口頭や手紙などで請求をしっかりするようにしましょう。

さらに効果的な方法として内容証明郵便を用いることをおすすめします。内容証明郵便によって、相手に心理的プレッシャーをかけることができます。ただ、離婚協議書は次に紹介する「公正証書」と違い“私文書”であるため、これだけで強制執行することができないといったデメリットがあります。

そのため、請求を続けても相手が養育費を支払わない場合は、裁判所で確定判決を得ることが必要になります。

〇公正証書を作成した場合

離婚協議書を、公正証書で作成した場合は、裁判を提起しなくても、公正証書の記載の中に「養育費の支払いが滞ったら強制執行を受けることを認める」という取り決めがあれば、裁判を提起して確定判決を得なくても、いきなり相手の給料や銀行口座などに強制執行をかけ養育費を回収できることになります。

そのため、相手に対して、「養育費を支払わないと強制執行される」という心理的なプレッシャーをかけられるため、未払いという事態そのものを避けることが期待できます。また、裁判を避けられるため、時間とお金の節約にもなります。

8.まとめ

離婚時に養育費の支払いを取り決め離婚したものの、その後支払いが途中で止まってしまうことはよくあることです。離婚してしまえば、子どもにとっては肉親かもしれませんが、元夫婦にとっては赤の他人。支払ってくれない相手に請求することはストレスになることでしょう。

しかし、このような状態を続けていれば、いずれ時効にかかり、後悔することになるかもしれません。養育費は子どもが成長するために必要不可欠なものです。そのため未払いが発生したら早めの対応が重要です。

また、養育費の取り決めをしたら公正証書を作成し、強制執行を認める旨の記載をしましょう。それだけで、相手方に心理的プレッシャーがかかります。そして、実際に未払いが発生したときには直ちに給与や預金口座を差押えすることが可能となります。

 

 

 

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