録音や動画データは遺言書として有効か?

こんにちは、函館の行政書士 小川たけひろです。

自分の死後、相続で家族が揉めないように遺言書を作成したいと考えている方は多いです。しかし、遺言書を残そうと考えている方は高齢の方が多く、病気を患い、手が不自由で文字を書けないとか、目が悪くなってしまい文字を見ることができないなど、自力で遺言書を作ることが困難な場合があります。こういった場合、遺言をボイスレコーダなど録音機器で録音したり、ビデオカメラに録画して残しても効力があるのでしょうか?

 

1.一般的な遺言の方式としての「自筆証書遺言」

遺言の方式として最もポピュラーなものは「自筆証書遺言」とよばれるものです。一定の記載方法などに制約や決まりがあるものの、思い立ったときに書き始めることができるため、最も利用されている方式です。

ただ、すべて自分で作成するため、高齢や病気のため、手が不自由だったり、文字が見にくくなっているような場合には、なかなか難しいかもしれません。また、認知症だったり、その疑いがあるような場合には、遺言者の死後、相続人の間で、その有効性が争われるといった問題が起きることもあります。

2.録音やビデオ撮影は遺言書として有効?

上記のように、手書きが難しかったり、目が不自由だったような場合に、もっと簡単な方法として、ボイスレコーダやビデオなどで、録音や録画したものを遺言書の代わりとして残すことは可能でしょうか?

結論をいうと、録音や録画などのデータは、法律で定められた遺言の形式に当てはまりません。つまり、ボイスレコーダーや録画機器などで残した音声や動画データは遺言としての効力を認められていません。

せっかく良いアイデアだとひらめいたのに残念ではありますが、遺言は「文字」で残すことが原則なのです。

3.録音やビデオを遺すことには意味があります。

ただ、録音やビデオのデーターに法律的な効力はないとしても、こういったデータを残しておくことが全く無駄なことではありません。むしろ、録音や録画といったデータが自身の死後、残された相続人の間で起こるかもしれない争いを未然に防ぐ有効な方法になりうるかもしれません。

どういうことかというと、こういった録音や録画のデータに加えて、遺言書を作るということが前提になりますが、遺言者が、そもそも、どうして遺言書を作ろうと考えたのか、その経緯や家族への想いを視覚や聴覚に訴えるということができれば、作成した遺言書について、遺言能力の存在や偽造ではないこと、誰かに強制されて書かされたものではないといったことを証明できるからです。

また、紙で作られたものと聴覚や視覚に訴えるものでは、相続人に与える印象がまったく異なりますので、遺言書の内容に不満や疑義を持つ相続人を説得することができるかもしれません。

そのため、自分の死後、相続人の間で争いが起こる心配があるなら、遺言書の作成に加えて、録音や録画のデータを残しておくのも一つの方法です。

4.録音や録画データだけの場合はどうなる?

「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」などしっかりした遺言書がなくて、録音や録画による遺言だけが残っていたといこともあるかもしれません。上記とおり、録音や録画のデータ自体は、法律的に有効な遺言ではありません。

そのため、相続人はその遺言に従う必要はありません。こういった場合には、相続人は話し合い、つまり「遺産分割協議」によって故人の相続財産を分配することになります。

ただ、録音や録画データによる遺言が法律的に無効であったとしても、「その遺言に従ってはダメだ!」と禁止されるわけではありません。

遺言の方式が法律的に無効なものであっても、データのメッセージの中に遺言者の意思や想いを汲み取り、相続人の間で話し合って、データに残された遺言内容に沿った遺産分割を成立させることも可能です。

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