相続制度改正のポイント② 「自筆証書遺言」の作成がより身近に手軽に


こんにちは。函館の行政書士 小川たけひろです。

民法が約40年ぶりに改正され、相続分野の制度も大きく変わりました。
前回は「配偶者居住権」について説明いたしましたが、「自筆証書遺言」についても「形式」について要件が緩和され、新たに「保管制度」が創設されました。今回は、法改正により、作成がより手軽で身近になった「自筆証書遺言」について説明いたします。

 

〇厳格だった改正前の形式

改正前の自筆証書遺言は、その全文を自筆で書く必要があり、代筆やパソコン、ワープロで作成したものは有効にならず、さらに、遺言の本文だけでなく、財産目録も全て自筆であることが求められていました。

特に財産目録の作成については、不動産の場合はその所在地、預貯金などの場合は、口座番号などの情報も含めて、すべて自筆でなければならないとされてきました。しかし、こういった作業には、細かい記載も多くなるためミスも多く、その度に決まった方式で訂正しなければならず、特に高齢者の方にとっては負担が大きいものでした。

 

〇形式についての改正点

そこで、今回の法改正では、遺言作成の際に負担となっていた財産目録作成について、パソコンやワープロでの作成が可能となりました。また、パソコンやワープロで一覧を作成しなくても、法務局が発行する「不動産登記事項証明書」や預貯金通帳のコピーに自署と押印をすることを条件として添付による一覧作成も認められることになりました。

ただし、施行日(平成31年1月13日施行)前に作成された自筆証書遺言には、この規定は適用されませんので注意が必要です。

 

〇新たに始まる保管制度

今回の法改正では、遺言の形式要件の緩和だけではなく、その保管方法についても新しい制度が始まります。

自筆証書遺言の保管制度についてはこちら

これまで自筆証書遺言を作成した場合、自宅や銀行などの貸金庫などに保管していることが多く、そのため、せっかく書いた遺言を紛失してしまったり、また、家族に発見されなかったり、さらに発見されても改ざんされる危険性がありました。

しかし、今回の法改正では、この自筆証書遺言を法務局に預けることができる制度が創設されました。この保管制度が始まることによって、紛失や家族に遺言書の存在が気づかれなかったり、改ざんされるといった危険性もなくなります。

この保管制度を使うためには、遺言者が自分で自筆証書遺言の原本を法務局に持参し、保管のための手数料を支払って保管の申請をする必要があります。このときに、遺言書の署名や捺印などの形式について不備がないか審査され、もし不備があれば、その時点で指摘してくれることになると思われます。

そして、相続が開始したときに、相続人や受遺者、遺言執行者は、法務局に対して、遺言書の写しの請求や閲覧などが可能になります。さらに、相続人等の誰かがその請求や閲覧をした場合には、法務局からその他の相続人に対し遺言書を保管していることが通知され、遺言書の存在が明らかになります。

また、自筆証書遺言では、相続開始後、家庭裁判所で「検認」と呼ばれる手続を受ける必要がありますが、この保管制度を用いた場合、検認手続を省略することができます。

この保管制度を利用することによって、保管上のトラブルはかなり減ると考えられるので、自筆証書遺言を作成する場合に活用される方も増えると考えられます。

ただし、形式的な要件の緩和が平成31年1月13日から施行されますが、保管制度に関しては、平成32年7月までに施行される予定のため、それまでの間に作成された遺言書は、自宅や貸金庫などで保管しておくか、信頼できる人に預けるなど、取扱いには注意が必要になります。

 

〇でも公正証書遺言の方が確実という事実

自筆証書遺言を作成する際のハードルが下がったことや、保管面の充実が図られたことにより、自筆証書遺言を作成する方が増えると思われます。

しかし、形式面が緩和されたといっても、我々専門家からはあまりお勧めはできません。
たとえば、遺言書本文と財産目録といった添付書類とで作成日が違ったり、署名している筆記用具が統一されていなかったり、遺言書本文と添付書類との間に割り印(契印)がないため、一体性を証明できないなどの場合は、相続人間で争いに発展する可能性があります。

法務局の保管制度を利用すれば、この形式面での不備は指摘されるでしょうが、自宅に保管するという場合には注意が必要となります。

また、法務局の保管制度を利用する場合であっても、その遺言書が、定められた形式に従っているかどうか保管のための要件のチェックのみとなり、遺言の内容面についてまでチェックや確認をしてくれるわけではありません。

たとえば、法定相続人の遺留分についての配慮や、個人事業主が遺言する場合に留意すべきこと、法定相続人以外に財産を譲りたい場合など、法定相続人間で後々争いに発展しそうな事柄がある場合や、“自分の最期の意思”としてしっかり遺言内容を実現させたいという場合には、細心の注意を払って作成することが重要になることから、これら法律的なチェックやアドバイスを受けることができない自筆証書遺言では心もとない部分があることも事実です。

この点、公証人が作成する公正証書遺言であれば、法律の専門家である公証人と二人以上の証人が立ち会って作成されますので、法律的な面はもちろん、遺言者の遺言能力についても信頼性が担保されることになります。
また、原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんといった心配もありません。

公正証書遺言の作成には、費用がかかるといったデメリットはありますが、効力のない遺言や後々、争いに発展しかねない内容の遺言を作成してしまうといった懸念が少ないといった優位性は、法律が改正されても変わらないといえるでしょう。

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