妻は夫の退職金を受け取れない!? 

こんにちは、函館の行政書士 小川たけひろです。

 

夫が会社の同僚女性と不倫したあげく、その女性と駆け落ちしてしまい、連絡も取れなくなり、会社もずっと無断欠勤しているよう。そしてついには、夫の会社が、夫を解雇して、退職金の一部を支払うと妻に通告してきました。こういった場合、妻が夫の代理人として、退職金を受け取って生活費などに充てることはできるのでしょうか?

1.賃金の「直接払いの原則」が壁になる!

民法761条は、「日常家事」つまり、”婚姻生活のための行為”について夫婦の連帯責任について定めています。そして、判例によると、この日常の家事に関する法律行為について、夫婦は互いに他方を代理する権限を有していると示されています。

しかし、退職金は、労働基準法上の「賃金」とされ、「賃金支払の五原則」が適用され、直接払いが原則ですから、労働者本人だけが受け取ることができるのです。そのため、たとえ夫の代理人という立場であっても、妻が夫の退職金を受け取ることはできません。

しかし、代理人としてではなく、「使者」という立場であれば、この使者に対する支払いは、労働基準法に違反するものではないとされています。使者という立場は、本人の手足に過ぎない、つまり、少々悪い言葉を使えば、“使いっ走り”に過ぎないからです。

代理か使者かの区別は、とても微妙で区別の難しいところですが、社会通念上、①本人自身に支払ったのと同一の効果を生ずるかどうか、②当該使者とされた者と本人との関係、③本人ではなく使者が受け取る理由などによって判断されることになります。

2.退職金を受け取る他の方法

なお、退職金も労働基準法上の通貨とされますので、通貨払いの原則が適用されます。つまり、賃金は必ず通貨(日本銀行券など)で支払わなくてはなりません。ですが通貨払いの例外として、労働者の同意があれば、口座振り込みで支払うことも可能です。

そして、口座振り込みであれば、夫名義の口座の管理については、夫婦の日常家事代理権の範囲内として認められているので、通帳や印鑑などを妻が管理しているのであれば、金融機関から払い戻しを受ける、つまり夫名義の口座から引き出すことが可能です。

また、夫が駆け落ちをして行方不明のため、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立て、管財人を選任してもらい、管財人が退職金を受け取るといった方法も考えられます。そして、妻が管財人に対して、生活費の相当額を請求することができます。

 

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