相続人が漏れてしまった場合の遺産分割協議書の効力

こんにちは、函館の行政書士 小川たけひろです。

 

亡くなった方(被相続人)が生前、遺言を書いていなかった場合、相続人全員で、故人の財産をどのように分けるかを話し合い、遺産分割協議書という書類を作成して、それを基に遺産を分けることになります。

では、相続人の中に“漏れた者”がいた場合、その遺産分割協議書の効力について影響はあるのでしょうか?相続人が漏れていた場合、以下のパターンによって効力が違ってきます。

 

① 戸籍上相続人であることが遺産分割協議の時点で判明していた場合

相続人の一部を除外されて行った遺産分割協議については、無効となります。

② 遺産分割協議後に、相続人であることが判明した場合

失踪宣告などにより、死亡したとみなされた者が、実は生きていて、失踪宣告が取り消された場合には、遺産分割協議自体は無効とはならず、有効となります。

このような場合には、失踪宣告の取消しを受けた者は、他の相続人に対して、現に利益を受けている限度で、その返還を求めることができます。

この「現に利益を受けている限度」(「現存利益」といいます)とは、実際に手元に残っている財産のことをいいます。

しかし、この手元に残っている財産の評価の仕方で返還の範囲が変わってきます。

たとえば、相続した金銭を全額ギャンブルなどの遊興費として使ってしまった場合には、現存利益はないので返還の必要はないとされています。

これに対し、相続した金銭を生活費に充てた場合には、その分必要だった生活費が浮いたはずなので、現存利益はあると考えられ、全額返還しなければならないとした裁判例があります。

ギャンブルで浪費した場合には返さなくてよくて、生活費に充てた場合には返す必要がある、というのは違和感を覚えるかもしれません。

③ 相続開始後の被認知者を除外した場合

たとえば、父親の死後、残された家族が遺産分割について話し合っているところへ「私も父親の子だ」と名乗る人が突然現れる、といったケースが冗談ではなく現実にあります。

このような婚外子(戸籍上結婚していない男女の間に生まれた子「非嫡出子」という)についても、父親の子であることに変わりがないので、父親が死亡すれば当然にその相続人となります。

かつては婚外子の相続分は、嫡出子(法律婚をしている夫婦の間に生まれた子)の相続分の二分の一と定められていましたが、この規定が憲法違反であるとされ、無効とされたため、現在では婚外子と嫡出子とで相続分に違いはありません。

しかし、この婚外子が、父の死亡時に戸籍に記載が無く、戸籍で確定できている相続人だけで遺産分割協議が成立した場合、その後に死後認知により相続権が確定したこの婚外子は遺産相続できるのでしょうか?

認知の効力については「出生のときにさかのぼって効力を生じる」とされていますが、同時に「第三者がすでに取得した権利を侵害することはできない」とされています。

どういうことかというと、仮に父親の死後に認知された子が「遺産分割協議に関与できなかったから遺産分割協議は無効です。だから遺産分割協議のやり直しが必要ですよ」とすると、このような新たに認知された子の存在すら家族にとっては寝耳に水であり、すでに遺産分割を終えていたり、遺産分割で取得した財産をすでに処分したりしてしまった他の相続人の権利が害されることになってしまいます。

また反対に、先に遺産分割が終わってしまった後では、その後に認知されても一切の相続が認められないとするのも、認知された子の利益は保護されないのか?という観点から見ると問題でしょう。

この点について、民法910条は、他の相続人がすでに分割や処分を終えているときは、新たに認知された子は、価額の支払いつまり「金銭の支払いのみ」を求めることができると定め、他の相続人と認知された子の利益の調整をはかりました。

しかしこの場合の問題は、価額をどのように決めるかということです。財産は時間の経過によりその価値が大きく変化することがあります。特に、不動産や株式を想像されるとわかり易いと思います。そのため、いつの時点の「価額」の支払いを求めることができるのかが問題となるのです。

この問題について最高裁は、価額の算定は、『価額の支払いを請求した時を基準とするのが当事者間の公平の観点から相当である』との判断を示しました。

 

 

 

 

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