相続制度改正のポイント①-2 「配偶者居住権」

こんにちは。函館市の行政書士 小川たけひろです。

 

民法が改正されたことにより、相続制度も時代に合わせて大きく3つの改正が行われましたが、そのうちの1つ「配偶者居住権」について前回(相続制度改正のポイント①-1 「配偶者居住権」)に引き続きお話ししていきたいと思います。

 

〇「配偶者居住権」

まず、前回も説明しましたが、「配偶者居住権」には、「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」と呼ばれる2つがあるのですが、前回お話しした「配偶者短期居住権」に対して、配偶者に終身又は一定期間、その居住建物の使用収益を認める居住権を「配偶者居住権」と呼んで区別しています。

そして、「配偶者短期居住権」が、6か月間という条件付きの権利であったのに対し、「配偶者居住権」は、配偶者が亡くなるまでの間、無償での居住が認められる権利です。

ただし、「配偶者居住権」が認められる要件として、

配偶者が、被相続人(亡くなった夫(妻))の財産である居住建物に、相続開始の時に居住していた場合で以下の①②③のいずれかの事情を満たすことが必要です。

①遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。

②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

③被相続人と配偶者の間に死因贈与契約がされていたとき。

これらのことが、被相続人の生前からの居住により当然に認められる「配偶者短期居住権」とは異なります。

わかり易く言うと、被相続人(亡くなった配偶者)から承認されたものか(②③のいずれかの場合)か、相続人から承認されたもの(①の場合)であり、遺産分割協議書、遺言、死因贈与契約書などの様式によって定められていることが必要です。

また、裁判所は、下記の場合に関して、「配偶者居住権」に関して審判をすることが可能となりました。

①共同相続人の間で、配偶者が「配偶者居住権」を取得することについての合意がある。

②配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合で、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき。

 

〇「配偶者居住権」が認められない場合

「配偶者居住権」が認められるには、相続開始時において、配偶者が対象の居住建物に住んでいることが条件です。もし、相続開始の以前から夫と別居をしていて、アパートやマンションなどの賃貸物件に住んでいた場合、夫名義の居住建物に「配偶者居住権」は発生しません。

また、仮に夫名義の家が2つあり、それぞれに夫と妻が別々に住んでいた場合、妻の「配偶者居住権」は妻が住んでいた家にのみ発生して、夫が住んでいた家には発生しません。さらに、対象の居住建物を第三者に賃貸していた場合もその家に「配偶者居住権」は発生しません。

 

〇「配偶者居住権」は「譲渡」できない

「配偶者居住権」は一身専属な権利なので、「譲渡」することができません。また、配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物を増改築すること、第三者に居住建物を使用または収益をさせることができません。仮に、配偶者が、所有者の承諾なしに居住建物を第三者に貸した場合、所有者から「配偶者居住権」について消滅請求される可能性があります。

 

〇居住建物の修繕費や維持費、固定資産税は誰が負担?

また、「配偶者短期居住権」同様、通常の修繕費や維持費は配偶者の負担となり、居住建物についての固定資産税については、所有者が負担することになります。

 

〇「配偶者居住権」は登記が可能

さらに、「配偶者居住権」は登記することが可能です。例えば、所有権を持った子供が、居住建物を第三者に売却したり、借金などにより、居住建物が差押えられても配偶者が「配偶者居住権」を失うことはありません。

 

〇「配偶者居住権」によって相続税はどうなるのか?

相続税については、「配偶者居住権」の有無によって税額が変わってくるため、「節税」効果を期待して相続人間で遺産分割協議などが合意されるようなケースが多くなるかもしれません。

詳しくは省略いたしますが、「配偶者居住権」の実際の運用を考える場合、居住建物について、「配偶者居住権」と「所有権」の2つの権利に分けます。そして、例えば、相続人が配偶者と子供1人の計2人の場合、「配偶者居住権」の評価を高くすることで、「所有権」を相続する子供の相続税を低く抑えるといったことが考えられます。

様々なケースによって税額が変わってくるので確定的なことはいえませんが、将来的に、税効果を意識した「配偶者居住権」の活用が増えてくるかもしれません。

 

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