こんにちは。函館の行政書士 小川たけひろです。
相続手続きや遺言書を作成する場合には、相続関係を証明するために、戸籍謄本や除籍謄本、原戸籍謄本などが必要となります。また、離婚協議書を公正証書で作成する場合にも、夫婦関係や親子関係を証明するために、戸籍謄本の提出を求められます。
これ以外にも様々な場面で戸籍の提出を求められることがあります。今回は、戸籍というものについて、それぞれの違いや注意点などについてご説明します。
戸籍謄本
戸籍謄本とは、その戸籍に記載されている人の氏名、生年月日、出生や死亡、婚姻や離婚、養子縁組や離縁など、身分の変動を記録する書類の写し、いわゆるコピーのことです。「原本」は本籍地の市区町村役場に保管されています。
謄本は原本すべての写しになります。最近は、戸籍謄本とはいわずに「全部事項証明書」といわれています。この謄本に対して記載されている内容の一部の写しの場合には、「抄本」と呼ばれ、この抄本も最近は「一部事項証明書」と呼ばれています。
つまり戸籍謄本は、ひとつの戸籍に記載されている全員の身分関係に関する証明書であり、戸籍抄本というのは、その戸籍に記載されている一人に関する証明書ということになります。
除籍と除籍謄本
戸籍の家族の一人が亡くなった場合や結婚、離婚、離縁(養子縁組を解消した場合のことをいう)した場合にも、戸籍から除かれます。
そして、戸籍に記載されているすべての人が除かれると、戸籍には誰も残っていない状態になってしまい、その戸籍は閉鎖されます。このようにして閉鎖された戸籍のことを、「除籍」といい、その写し、つまりコピーのことを「除籍謄本」といいます。
相続手続きではこの「除籍謄本」を必要とされることがありますが、戸籍に配偶者や子供がいる場合には、除籍謄本ではなく、戸籍謄本が発行されることになります。そして、亡くなった方の身分事項欄には「除籍」と記載されています。
よく相続手続の際に必要な書類として、「亡くなった方の除籍謄本」と記載されていることがありますが、正確にいえばこれは間違いで、「その人が亡くなったことを証明する書類」が必要なのです。
つまりこの場合、「その人が除籍されている戸籍謄本または除籍謄本」が要求されているということになります。
また、本籍は届出をすることによって移すことができます。これを「転籍」といい、転籍があった場合には従来の戸籍は閉鎖されます。このようにして閉鎖された戸籍の写しも、除籍謄本といいます。
改製原戸籍謄本
日本には「戸籍法」という戸籍に関する法律があります。この戸籍法が改正されることによって、戸籍の様式などが変更され、その都度新しい様式の戸籍に書き替えがなされることを「改製」といいます。
そして、この改製をする前の戸籍のことを「改製原戸籍」(「かいせいげんこせき」または「かいせいはらこせき」)と呼びます。そしてこの写しを改製原戸籍謄本といいます。
平成6年にも戸籍法が改正され、戸籍の管理がコンピューター化されたことによって、従来の縦書き様式から、横書きの様式に変更されました。この戸籍法の改正により作り替えられた前の戸籍も改製原戸籍となります。
改製原戸籍についての注意点
戸籍の改製があると、新たな戸籍に記載内容が転記されるのですが、このとき注意すべき点は、すべての内容が転記されるわけではないということです。つまり、改製原戸籍には記載があった内容でも、改正後の戸籍には記載がない場合があるということです。
これを具体例をあげて説明しますと、たとえば戸籍に、夫婦と子供の記載があるとします。その子が婚姻すると、その子は戸籍から除かれることになります(婚姻により新たに作成された戸籍に入ることになります)。
そして、その後に戸籍が改製された場合、改製された新しい戸籍には、その除かれた子供の身分事項について記載されません。したがって、改製より後のものだけでは、その子の存在について証明できないことになります。
なので、相続手続きをする際に、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までのすべての戸籍を要求されるのは、このように、一部の戸籍のみを見たのでは相続人の一部が記載されていないことがあるためなのです。
戸籍の取り方
戸籍謄本や除籍謄本などは、本籍地のある市区町村役場で請求します。
相続では、すべての戸籍を集める必要があるため、現在の本籍と違うことも多く、どこに戸籍があるのか、分からないことがあり、苦労することもあります。
戸籍を収集する場合、戸籍に記載されている、その前の本籍地を見ていくことがポイントです。戸籍には必ず以前の本籍地が記載されているため、これを一つずつ追っていきます。そして、その本籍地の市区町村役場に請求することになります。
遠方の戸籍を必要とする場合は、郵便為替(定額小為替)を同封して、請求するという方法もあります。郵送で請求する場合には、請求先の市区町村役場のホームページ等で請求に必要な書類や定額小為替の金額を確認しておきましょう。