「踏んだり蹴ったり判決」?

浮気、不倫した側から離婚請求は認められるのか?

現在、離婚する夫婦は、1年間に約22万5000組(厚生労働省 平成27年人口動態統計)。約2分20秒に1組、婚姻した夫婦の3組に1組が離婚しているという計算になるそうです。

離婚に至るには様々な原因がありますが、このなかで、離婚原因を作った配偶者(有責配偶者という)が、裁判で離婚を請求することができるのか?という問題があります。

具体的な例をあげると、浮気や不倫をした挙句、家族を捨てて出て行った配偶者の方から、裁判に訴えて離婚することできるか、ということです。

浮気や不倫をした側から「もう愛情がなくなった。だから離婚してくれ」というのはなんとも自分勝手な話ですが、実は珍しくもなんともない話なのです。

こういった場合でも、お互いが話し合って、納得のうえで離婚に至れば問題はないのですが、話がスムーズに進まず、挙句に揉めてしまうと調停や裁判まで発展してしまいます。このような場合、裁判所は離婚を認めるのでしょうか?

 

有責配偶者からの離婚請求は認めない「有責主義」という考え方

実際の裁判例を見てみると昭和27年の「踏んだり蹴ったり判決」という有名な判決があります。

民法の規定には、浮気をされた配偶者(無責配偶者という)からの離婚請求は認められますが、有責配偶者からの離婚請求は直接規定されていません。そのため、長い間、有責配偶者からの離婚請求は認められませんでした。

有責配偶者からの離婚請求を否定した、昭和27年のいわゆる「踏んだり蹴ったり判決」という代表的な判例があります。

妻以外の女性と同棲関係にある夫からの離婚請求について、「もしかかる請求が是認されるならば、妻はまったく俗にいう踏んだり蹴ったりである。法はかくのごとき不徳義勝手気ままを許すものではない」として請求を棄却し、この判決以来、有責配偶者からの離婚請求は許されないという考え方が確立しました。

このことは、相手方に責任がある場合に、無責配偶者の側からは離婚請求ができるが、自分に責任がある有責配偶者からの離婚請求は認められないという考え方で、これを「有責主義」と言います。

この判決が出た時代は、離婚の慰謝料額は少ないか、または、まったくもらえないとか、また、財産分与に関しても現在ほどは認められていませんでしたし、現在のように、離婚にともなう年金分割制度もなく、年金ももらえなくなる可能性もありました。

さらに女性が働くことは今以上に困難であり、離婚によって被害者である女性が逆に肩身の狭い思いを強いられたりなど、酷な状況が多く存在しました。そのため、裁判所は、女性の離婚後の生活を維持するために、簡単には離婚請求を認めなかったのです。

 

「有責主義」から「破綻主義」へ

しかし、時代が変わり、女性が社会に進出し、活躍の場が増え、女性の社会的地位が向上してくるにつれて、今までの考え方では、夫婦関係を律することが困難になってきました。

そして、上記のような「有責主義」の考え方は、「愛情がなくなった夫婦を法律によって縛るのはおかしい」というような考え方に変わってきました。つまり、すでに夫婦関係は破綻しているのに、法律で夫婦としての名ばかりの体裁を維持していくことは合理性を欠いているという考え方です。これを「破綻主義」と言います。

そもそも、離婚で裁判になること自体がすでに婚姻関係の継続は不可能に等しく、離婚請求を棄却しても、本当の解決にはならない現実を考えると、破綻主義の考え方は合理的であるといえます。

最高裁で昭和62年に下された判決では、従来の判例を変更し、3つの要件のもとで有責配偶者からの離婚請求が許される場合がある旨を示し、「破綻主義」という考え方に転換しました。

 

有責配偶者からの離婚請求が認められる3つの要件とは?

昭和62年の判決では以下の3つの要件を満たした場合には有責配偶者からの離婚請求を認めるとしました。

(1)  夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間と比較して、かなり長期間に及んでいること。

(2)  当事者の間に未成熟の子供が存在しないこと。

(3)  妻が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて過酷な状況に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと。

(1)の要件の場合、6~8年の別居期間(最近では3~5年程度で認められる場合もある。)があれば、離婚請求が認められる事案が増えています。しかし、この考え方は、あくまで裁判になった時に、裁判所が判決を下す際の考え方であるということです。

 

早期解決には、話し合いが基本です!

夫婦が話し合いによって離婚するのであれば、(1)の別居期間は問題になりません。そういったことから、早期に解決を望むのであれば、基本的には夫婦が話し合って解決することが一番です。

有責配偶者であっても、(3)の要件を踏まえて、誠実に相手と向き合って話しあい、離婚後も相手側の生活がしっかり成り立つような誠意ある対処をすれば離婚することは可能なのです。

そして、話し合って取り決めた条件などは公正証書にしておきましょう。

 

 

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